かしこ。

自分の記録。

視界を掴まれるという感覚。

 

 

アイドルのオタク、もといファンにしかわからない感覚があると思う。

関わったことのない人からすれば、

「勘違いだよw」「自意識過剰だよw」「みんなそう言ってるんだよww」ともれなく痛い人認定されるアレである。

 

アイドルのコンサートに足を運ぶと必ずといってついてくるファンサービス。

私はこれに関し、この夏初めての体験をしたので忘れないうちに書き残しておこうと思う。

 

 

ファンサービスといえばファンサうちわへの返答が一般的には第一に浮かびやすいのではないだろうか。

「手振って」「ピースして」「○○って呼んで」

それに華麗に答えていくアイドルたちをみるのは自分ゴトじゃなくても興奮するものがある。

しかし、それを仮に一般的なファンサと称するのであれば私の自担はファンサをしない。

ほぼしない、と思う。

少なくとも私は彼がそういったうちわに対応しているところをこの目で見たことはない。

(もちろん歴の浅いオタクであるし全公演隅々まで見ている訳でもないので、どこかではしているかもしれないが、圧倒的に数は少ないという話)

 

こんなご時世になる前の公演では、客席降りをしてファンと手が触れるほどの近さにくることもあった。

彼の真横にいた女の子は手を伸ばし、彼とハートを作ろうとしたのだろうが彼はそれに対応することはなかった。きっと見えていたとは思う。これを冷たい奴だ、何様だ、と捉える人も中にはいるんじゃないかと思う。

しかし私は優しい人だと思った。

立ち去る時、声には出さずとも「ごめんね」と眉を少し下げたような表情で会釈して去っていくのを見ていたから。

構ってあげることもできたはずだ。一瞬手を伸ばしてあげるだけでいい。

でもしない。

きっと、その他大勢遠くにいるファンまで視野を広げて見てるから、気持ちを考えているから誰か1人を特別扱いはしない。

そんな優しい人なんじゃないかと私は勝手に納得したのだ。

 

その優しさは今も変わらない。

だから私はファンサうちわたるものは持ってもいかない。

彼に何かをお願いするよりも、彼を応援していると大好きだと、気持ちを伝える方が意義があると思ったから。

これも勝手なオタク心であるから、別に彼に直接伝わっているかどうかはどちらでも良かった。見えてたらいいな、伝わればいいな、まぁいっぱいファンはいるし見えてないと思うけど・・・。そんな気持ちであった。

 

しかし、私は私の応援しているアイドルを舐めていたのだとこの夏思い知った。

結論から言うと、彼は見ていた。

見てないかもなんて失礼な話である。

彼は、彼のファンを見ている。それもすごくすごくよく見ている。

常々、どこの席に入っても「見てる気がする。伝わってる気がする」と思うことはあった。

同担同志諸君であれば体感したことがある人も少なくないのではないか。

それを今までで一番強く体感したのがこの夏だった。

 

物理的に近い席に入った。オタク人生一番の距離だ。

こればっかりは運だから、神か何かに感謝する。

裸眼で見る自担の神々しいこと。

ずっと指先がピリピリしてた。

ずっとずっと、その姿を目で追って感嘆の溜息しかでない。

元気にペンライトを振る余裕も失って、胸に持ったうちわをぎゅうと抱きしめた。

そんな最中、ドクンと心臓が大きく鳴る感覚。目があった感覚がしたのだ。

こちらサイドに目を向けただけかもしれない、とかどうとか一瞬でいろいろ考えた。

でも、そんな思考は本当に一瞬で飛んだ。

目が、思考が、全てが彼から離せない。

 

「俺を見ろ。もっと見ろ。もっと魅せてやるからそこで見ていろ」

 

そんな思考が流れ込んでくるような感覚すらした。

私はずっと彼のことを見ている側だと思った。

でも違っていた。

見ているんじゃない。これはもう彼から視界を掴まれている。

血液が全部沸騰したんじゃないかと思うほど体は暑かったし、クラクラするほどのかっこよさで色気で倒れてしまいそうだった。しかし、目線を外すことを許さないのだ。

俺を見ろ、と訴えられてる。

そして極めつけは、「どうだった?」と言わんばかりに満足げな表情を浮かべる。

完敗だよ。もう私の目にはあなたしかうつらない。

 

また違う場面もあった。

ポップで楽しい曲では通り過ぎようとする彼にかろうじて取り戻した正気を振り絞ってペンライトを振る。「大好きだよ」「応援してるよ」「ありがとう」たくさんの思いを込めて振る。これが最大限の愛の伝え方。

するとどうだろうか、フッと優しく笑みを浮かべるのだ。

ずっと見ていないと気がつけないほど小さな変化だ。

でもずっと視界を掴まれていたからわかる。今、自分が視野に入っていたこと。

きっと伝わっていること。

彼は見ている。自分のファンのことを。

今回はたまたま物理的に近い距離にいたから、それを今までで一番実感しやすかっただけだ。

だからこそ逆に確信できた。

今までもずっとあの顔で私たちファンを見ていてくれたこと。

勘違いじゃなかったこと。

どこにいても、隅から隅まで目を配ってくれていたこと。

全部勘違いじゃなかったと、確信できたのだ。

 

どこまでも優しく、愛情深い人。

 

私たちにとって彼が特別なように、

彼にとって自分のファンは愛おしく笑みを向けてくれるほど特別なのだと思う。

 

 

 

 

追記

 

無駄に丁寧に書いて残したが、

あの優しい顔をみた感想は「彼氏の顔しとんなよ」だったし

ダンスナンバーで視界を掴まれた時の感覚を言葉にするのであれば間違いなくセックスだった。

これが一番端的かつ語弊もない、私の受けた心の状態を表せる表現。